海外の医療先進国に学ぶ、医療の「DX化」と日本の将来

海外の医療先進国に学ぶ、医療の「DX化」と日本の将来

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日本では、少子高齢化による医療サービス需要の増加で「医師不足」が懸念されています。2018年に経済開発協力機構(OECD)がまとめたデータによると、日本の人口1000人当たりの医師数は、35カ国・地域中28位の2.5人で、ドイツの4.3人やイギリスの3人と比べても少ない値です。また、夜間の診療や緊急時の搬送など不規則な働き方が多い医療現場では、医師の「過労働」も問題視されています。今後は、さらに「超高齢化社会」が進むと予想され、未だ「対面医療」や「紙カルテ」が主流の医療機関では、業務効率を高めるべく、「医療のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化」が求められています。

現在、日本では民間企業や国全体で「DX化」が進めており、医療分野においては途上段階にあります。今回は、医療先進国と称される国を取り上げて、日本はどのように「医療のDX化」を進めていくべきかを解説します。

医療先進国におけるDXの活用

アメリカ「遠隔診療システム」

アメリカでは、1993年にアメリカ遠隔医療学会が創設され、古くから遠隔診療の実現に取り組んできました。そして2020年、新型コロナウイルスが流行し、アメリカの公的保険であるメディケイドとメディケアが遠隔診療への支払い率を上げたことで、遠隔診療の普及が急増しました。2020年4月にMcKinsey&Companyが実施した調査によると、アメリカの患者の76%が遠隔診療に関心をもち、46%の患者が実際に利用したことが明らかになっています。

実際に医療機関に導入されている例として、「マーシー・ヘルスケア・システム」があげられます。ミズーリ州、アーカンザス州、カンザス州、オクラホマ州の4州で運営されており、バーチャルケアセンターから、継続的なモニタリングが必要な患者のケア、常駐していることが少ない神経学科医による診療などのサポートを行っています。

ドイツ「AIによる糖尿病の早期発見」

ドイツでは、2019年にデュースブルク・エッセン大学の医学部とエッセン医科大学が「医療人工知能研究所」を設立し、AIの医療分野における活用について研究を行っています。

ドイツ初の糖尿病専門病院「メルゲントハイム糖尿病センター」では、2018年にEyenuk(アイヌック)社のEyeArt AIアイ・スクリーニング・システム」を導入し、糖尿病網膜症の早期発見に利用されています。医師がリアルタイムでスクリーニングを実施し、定期受診で、専門医への紹介が必要となる症状を患っている患者を迅速に発見できるようにしています。

フランス「オンライン健康保険サービス」

フランスは、2013年から国内のIT企業を育成するため、「フレンチテック」と呼ばれるスタートアップ支援を推進してきました。フランスでは、大企業とスタートアップ企業が共栄することで、新たなビジネスの展開を目指しており、毎年3月にパリで開催される「Hello Tomorrow Global Summit」、5月に開催される「VIVA Technology」は、いずれも大手企業が協賛しています。

フランスのヘルスケアのスタートアップ「Alan(アラン)」は、医療保険の加入から保険金の請求までの手続きが全てオンラインで可能な医療保険を提供しています。さらに、医師探しや負担額の見積りができるAlan Mapというサービスも展開しており、急速な市場拡大で注目を集めています。

韓国「AIによる肺がんの早期発見」

日本と同様、高齢化が進む韓国では、国がスタートアップ企業と連携し、医療分野におけるDXの活用が進められています。2018年に厚生労働省が行った調査によると、2017年の韓国の医療機関へのEMR(病院内カルテの活用向けの電子カルテ)導入率91.4%であり、同年の日本での導入率が46.7%であることと比較すると、かなりDX化が進んでいることが推測されます。

韓国のAI医療スタートアップ企業である「Lunit(ルニット)」の「Lunit INSIGHT」は、肺がんの早期発見をサポートするAIを活用したX線分析システムを提供しています。同社のホームページによると、診断制度は97~99%を誇り、ヨーロッパやオーストラリアなどの海外での販売も認証されています。

日本の医療機関におけるDXの活用と課題

国内では、「IT導入補助金」「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援のための補助金」などの補助金制度を通して、医療機関への電子カルテなどの普及を進める動きが活発になっています。さらに近年は、医療機関向けのシステムを開発するIT企業が増えてきており、AIやloTなどの最新技術を活用したサービスを提供しています。

活用例① 医療情報プラットフォーム

ソフトバンク株式会社が提供する健康・医療情報プラットフォーム「HeLIP(Healthcare Local Information Platform)」は、医療機関をはじめ、介護支援施設や薬局などの各機関をシステムで連携することによって、患者の持病や接種状況、過去の診療履歴などが閲覧できるシステムです。

活用例② 在宅診療支援サービス

株式会社オプティムが提供する「Smart Home Medical Care」は、患者が自宅で自分らしい生活を送れるよう、体調や室温を検知できるセンサーやAIカメラなどを用いて、自宅のベッドの機能性を向上するとともに、症状管理やスタッフの勤怠管理など、在宅医療に関わる様々な医療業務を効率化するシステムです。

活用例③ AI問診票

Web問診票とは、来院時に患者が紙に症状などを記入する代わりに、タブレットやスマートフォンに表示された問診票に入力することで、待ち時間の短縮などを可能にしたサービスです。Ubie(ユビー)株式会社が提供する「AI問診ユビー」は、電子カルテと連携しており、AIを活用して、患者が入力した問診票から想定される病名まで出てくる画期的なシステムです。

活用例④ 病理診断解析システム

メドメイン株式会社が提供する「PidPort」ディープラーニングによる画像処理技術によって病理スクリーニングや遠隔病理診断を可能にします。AIによる病理画像解析によって高度な診断を実現するとともに、また病理画像を他の病理医に共有したり、新たな診断依頼をする際にもスムーズな手続きができるようになります。

今後の課題

2017年に実施された厚生労働省の医療施設調査によると、電子カルテの普及率は、一般病院で46.7%、一般診療所で41.6%となっています。2020年に野村総合研究所が発表した報告書によると、現在デンマークやオランダなどでは100%近くの医療機関での導入が実現しており、日本は後れを取っていることが推測されます。

今後は、少子高齢化社会が進み、新たな医療サービスやシステムを提供する民間企業が増えていくと予想されますが、電子カルテに記録されているデータベースは様々なシステムと連携するうえで必要不可欠です。

「医療×IT」が抱える課題
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まとめ

今回は、医療先進国で導入されているシステムや日本が今後どのようにDX化を推進していくべきかについて解説しました。海外の医療先進国では、積極的な遠隔診療やAIを用いた治療法の開発などが進められており、その動きは日本国内でも見られます。「医師不足」、「超高齢化社会」、「働き方改革」など医療環境において多くの課題を抱える日本では、医療業務の「DX化」が必要不可欠です。医療体制の見直しが図られている状況下で、段階的に施設内のシステムを見直し、少しでも医療スタッフの負担を軽減できる方法はないかを考えることが重要です。

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