近年の美容や健康に対する関心の高まりから、2024年のエステ業界は注目を集めています。エステサロンには様々な業態があり、ボディエステやフェイシャルエステ、ブライダルエステなど、多様化したニーズに合わせたエステサロンが存在しています。また、株式会社 矢野経済研究所の「エステティックサロン市場に関する調査を実施(2024年)」によると、2023年度のエステティックサロン市場規模は3,139億円と見込まれているほど大きなマーケットです。
エステサロンの開業にあたっては、初期投資、ランニングコスト、運営方針の確立などの準備が重要です。また、競争が激しい市場であるため、差別化の戦略も必要となります。
本記事では個人経営を前提としたエステサロンの開業手順を7つに分けて解説をします。開業までの流れを把握することで、スムーズなエステサロンの経営につなげられます。また、エステサロンの運営に役立つ予約システムも紹介します。
手順① 施設コンセプトの立案
エステサロンの開業前に、今後の施設の方向性となるコンセプトを立案します。施設コンセプトを明確にすることで、顧客に対して提供する価値を定められます。
施設コンセプトとして、以下のポイントを考慮することが重要です。
・ ターゲットの特定
エステサロンのターゲットの設定として、女性に特化したトータルエステサロン、お腹周りなど特定の部位に悩みを抱える顧客への施術の提供などが挙げられます。対象となるターゲット層の年齢、性別、施術内容によって、設定すべきサービス料金の設定が変化します。
・差別化戦略
差別化戦略を実施することで、自身のサロンが顧客に選ばれやすくなり、ロイヤルティの形成につなげられます。差別化の要素として、有資格者やエステティシャン歴のあるスタッフによる施術が含まれます。
手順② 事業計画の策定
事業計画を策定するうえで、どれくらいの規模で事業を実施するのか、開業資金やランニングコスト、収益見込みなどを考慮します。また、物件家賃や人件費などのランニングコストは、慎重に仮説検証して、正確な数値を算出することが重要です。
正確な事業計画を策定することで、資金調達をしやすくなり、資金難に陥るリスクを下げられます。
手順③ 物件探し
次のステップとして、物件の種類や選定ポイントを踏まえ、エステサロンに適した物件探しを行います。
物件の種類
物件の種類は居抜き物件とスケルトン物件に分けられ、以下にその詳細を紹介します。
居抜き物件
居抜き物件とは、前テナントが使用していた設備類をそのまま残して賃貸借する物件を指します。また、既存の従業員や顧客も引き継げることもあり、開業初期の経営がスムーズになりやすいです。
一方で居抜き物件の契約では、オーナーとテナントの間に仲介業者が介入して締結されることが一般的で、契約時に細かい条件を求められることが多いです。加えて、設備類が新しい場合には、一連の設備を買い取るための費用として造作譲渡費が発生することがあります。
下記の美容室やエステサロンに特化した物件検索サイトを使うと居抜き物件を探して問い合わせることができます。
居抜き物件のサイト
・株式会社インペリアルガーデン「SALON PRODUCE」
・株式会社BGパートナーズ「サロン不動産ネット」
スケルトン物件
スケルトン物件は、サロン内の内装・設備などが何もない物件です。自身で設備やインフラ等を準備する必要がありますが、思い通りに店舗構築を行えます。
ただし、初期費用や退去費用が多くかかる傾向にあり、 綿密な資金計画が求められます。 特に工事期間が予定よりも長引いた場合でも、家賃の支払いが必要な点は注意しましょう。
下記の不動産物件検索サイトを使うと、 スケルトン物件を探したり、紹介してもらうことができます。
スケルトン物件のサイト
・株式会社リクルート「Tempodas(テンポダス)」
・ホクトシステム株式会社「テンポスマート」
・株式会社しんか「スケルトン オフィス 東京」
物件選びのポイント
エステサロンの物件を選ぶ際に注意すべきポイントは以下の通りです。
立地条件
エステサロンの物件選びで重要な要素は、人通りの多い場所に出店することです。 人通りの多い道沿いの物件は、通行人の目に留まりやすく新規顧客を獲得しやすくなります。
一方でエステサロンに通っている姿を他人に見られたくないという顧客もいるため、ターゲット層の顧客心理を踏まえた物件選定が重要となります。
事業展望と必要なスペース
どんなエステサロン事業を展開していくかを具体的にイメージすることで、用意すべきスペースが可視化できます。例えば、スタッフを雇用する際は、スタッフ数に合わせて休憩スペースの確保が必要です。加えて、ロッカーや鏡などを置いても十分なスペースであるかも確認します。
今後の事業の方向性や規模を踏まえたうえで、物件選定を行っていきましょう。
手順④ 開業資金と見積金額計算
開業方法や物件の規模によりエステサロンの開業資金は異なります。テナントサロンを開業する場合は約600万〜1,000万円が推定となります。
開業費用の内訳は、施工費、ランニングコスト、その他費用となります。以下に、その内訳と見積金額計算の例を説明します。
施工費
エステサロンの内外装費は、300万円~700万円が相場です。施工に掛かる平均的な坪単価は20万円程で、高いケースでは30万円~40万円程が目安となります。ただし、前テナントが使用した内装がそのまま残されている居抜き物件であれば、費用を抑えやすくなります。
主な施工内容として下記が考えられます。
・ デザイン設計
・ 仮設・解体工事
・ 軽量鉄骨工事
・ 建具工事
・ 電気工事
・ 給排水工事
・ 塗装工事
ランニングコスト
ランニングコストで、差が発生するのは人件費です。事前に必要なスタッフ数や求めるスタッフの経験値などを考慮する必要があります。
ランニングコストとして以下のような項目が考えられます。
・家賃
・(スタッフを雇用する場合)人件費
・備品・消耗品購入費
・広告宣伝費
・予約システムの利用料
その他費用
エステサロンの開業では施工費とランニングコスト以外にも、下記の費用が含まれます。
【美容機器】
・ 吸引美顔器
・ 複合美顔器
・ 痩身機器
【それ以外】
・ ベッド
・ イス
・ スチーマー
・ ドレッサー
・ タオル保冷・保温器
また、施工費を抑えたい場合、エステ器具の中古品やレンタルを検討することが有効な手段です。
・株式会社ビューティガレージ「BEAUTY GARAGE」
・株式会社BGリユース「BGリユース」
見積金額計算の例
本項では、エステサロンの開業にかかる見積金額を計算していきます。
当見積の物件では、東京都品川区にあるスケルトン物件を使用すると仮定し、家賃30万円(坪単価は12,000円で25坪)、敷金と礼金それぞれ1カ月分を含む初期費用を90万円とします。
当物件には2つの個室があり、それぞれの部屋に各種備品を配置します。エステサロンで使用する痩身マシンは株式会社TRYANGLE & CO.(トライアングルアンドコー)が販売する「caviZERO」とします。また、店舗運営のために、開業時は正社員1名を雇用します。
上記の要件をもとにした見積金額は799万6,000円で、その計算方法は下記となります。
手順⑤ 開業に向けた資金調達
開業資金の調達方法は主として、クラウドファンディング、融資、補助金・助成金が挙げられます。多角的な方法を踏まえることで、自身のサロンに適した資金調達を実施することが重要です。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、プロジェクト・事業を立ち上げた人に対し、多くの支援者から資金を募る仕組みを指します。銀行ローンや投資家からの資金調達と異なり、借金を背負うリスクがなく、事業に失敗しても負債が残らないことが特徴です。
一方で、世間から魅力的な企画として認知されないと、目標金額の達成が難しくなる可能性があります。
クラウドファンディングで資金調達をしたプロジェクトの例
・エステサロンQREEP「コロナに負けずに挑戦!最新機械を揃えて麻布十番にエステサロンを開業」
・BULK HOMME「世界一のメンズフェイシャルエステを造り、「日本の男はカッコいい!」未来を創る」
政策金融機関や民間金融機関からの融資
公的機関からの融資として、日本政策金融公庫や銀行への申請が一般的です。また、都市銀行よりも地方銀行の方が、小口取引がメインで地域発展を目標に掲げていることから、融資を受けやすい傾向にあります。
融資のプロセスでは、申請者の借入希望金額や返済プランなどが厳しくみられる傾向にあります。企業や事業の具体的な内容も精査されるため、入念な事業計画策定が重要です。
政策金融機関や各銀行が設けている利用資格に満たない場合は、銀行融資を申し込むことができないため、各支店へ要件の確認が必要となります。
融資元となる銀行の例
・日本政策金融金庫「日本金融金庫 一般貸付(生活衛生貸付) 」
・千葉銀行 「ちばぎん地方創生融資制度」
・福岡銀行 「創業支援」
補助金・助成金
補助金と助成金は、ともに国や地方自治体から事業者に支給される支援金です。助成金が要件を満たせば受給可能なのに対して、補助金は要件を満たしていても、審査で採択される必要があります。
エステサロンで活用できる補助金や助成金として、下記が挙げられます。そのほか、各自治体や財団法人がさまざまな補助金・助成事業を行われているため、事前に該当市町村へ確認することが重要です。
補助金
・全国商工会連合会 「小規模事業者持続化補助金」
・独立行政法人中小企業基盤整備機構 「IT導入補助金」
助成金
・公益財団法人 東京都中小企業振興公社「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」
・TOKYO創業ステーション「創業助成事業」
手順⑥ 資格と届出の手続き
エステサロンに必要な資格と届出の手続きをすることで、公式に開業ができます。自身の経営方針に基づき、求められる資格や届出を取得します。
資格
エステサロンを開業する際、特別な資格を持つ必要はありません。しかし、以下のような民間資格を持つことで、第三者機関からの客観的な証明となるため、専門的な知識や技術を顧客にアピールすることができます。
資格名 | 主催機関 | 受験料(税込) |
AJESTHE認定エステティシャン | 一般社団法人日本エステティック協会 | 10,560円 |
AEA認定エステティシャン | 一般社団法人日本エステティック業協会 | 14,300円(上級認定エステティシャン) 17,600円(インターナショナルエステティシャン) |
CIDESCOディプロマ | 一般社団法人CIDESCO-NIPPON | 90,680円 |
AJESTHE認定エステティシャン
AJESTHE認定エステティシャンは、基本的な知識・技術をもち、担当範囲のエステティックサービスを適切に提供できる能力を有することを証明となります。 また、上級エステティシャンやトータルエステティックアドバイザーなどの上位資格を持つことで、より高い知識や技術を示すことも可能です。
資格取得の条件
下記の両方を満たすこと
(1) エステティシャンセンター試験の合格
(2) 協会認定校での300時間以上コースまたは1000時間以上コースの修了、または実務経験1年以上
AEA認定エステティシャン
AEA認定エステティシャンは、基礎知識と技術を持ち、禁忌や注意事項を理解し安全な技術提供ができるエステティシャンであることの証明になります。資格は、 基礎資格、上位資格、最上位資格に分けられます。
こちらも上級資格を得ることで、豊富な経験や知識から、顧客満足度の高い様々なコースを提案できるエステティシャンとしてアピールできる資格となります。
資格取得の条件
AEA認定校にてカリキュラムの履修をした者、もしくはエステティックサロンでの実務経験(フェイシャル又はボディ)がある者が認定試験(筆記・実技)への合格
CIDESCOディプロマ
CIDESCOディプロマは、一般社団法人CIDESCO-NIPPONが設立した国際資格で、世界水準のエステ理論と技術を持つことの証になります。基礎となる当資格に加えて、アロマセラピーに特化したAroma Therapy Diplomaとスパを専門としたSpa Therapy Diplomaなどがあります。
資格取得の条件
下記のいずれかを満たすこと
(1) CIDESCO国際認定校において1200時間以上のカリキュラムを終了し、CIDESCO国際試験への合格
(2) 実務経験が2年以上あるエステティシャンでCIDESCO RPL国際試験への合格
届出
個人事業主としてエステサロンを開業する場合は、1カ月以内に所轄税務署に開業届を提出する必要があります。一方で法人設立の際は、法人設立日から2カ月以内に法人設立届出書の申請が求められます。
届出の提出方法は、下記の種類に分けられます。
②郵送・投函:開業届は国税庁のホームページからダウンロードできるため、郵送や時間外収受箱への投函が可能です。
③オンライン提出:国税庁のオンラインサービスe-Taxの利用によって、自宅で開業届を提出できます。
また、国税庁の「青色申告特別控除」によると、開業届の提出後に青色申告承認申請書を税務署に提出することで、税制上の特別な控除を受けられます。青色申告は、所定の帳簿を用意し、経理の記録を行い、その記録に基づいて税申告をする制度です。
手順⑦ 開業日時の決定
開業前の最終手順として、エステサロンの店舗オープンに向けた準備を進めていきます。内装施工の日程から逆算して、開業日を最終決定します。また、スタッフを雇う際は、早めに採用して、育成を行う必要があります。
よりスムーズなエステサロンの営業につなげるために、ホームページ制作やSNS活用したマーケティング活動、予約システムなどのシステムの導入を、開業日までに済ませておくことが大切です。特に予約システムの導入は、顧客管理における業務効率化や費用削減、マーケティングの強化にも効果的なので、おすすめの施策です。
エステサロンの店舗予約には、予約システムRESERVA
RESERVA(レゼルバ)は、導入数28万社を誇る、国内トップクラスのクラウド型予約管理システムです。業界・業種問わずあらゆるビジネスに対応しており、350種類以上の業態でRESERVAが利用されています。アカウント発行から予約システム作成完了まで最短3分で、永久無料で使えるフリープランもあるため、導入コストを低くしたい、使用感を確かめてから導入したいといった店舗運営者におすすめです。
100種類以上の機能を搭載しており、エステサロンの予約業務の効率化はもちろん、エステサロン運営に欠かせない機能が揃っています。例えば、リマインドメール機能では、予約日の前日に確認のメールを自動で送信できるため、利用者における予約時間の勘違いや無断キャンセルの防止につなげられます。
RESERVAは多彩なプランからエステサロン運営のニーズに沿った選択ができ、使用予定の機能数によって細かい料金設定がされている点も特徴です。
まとめ
今回はエステサロンの7つの開業手順とエステサロン運営に役立つ予約システムを紹介しました。エステサロンを開業するにあたり高額の資金が必要となるため、事前にクラウドファンディングや融資などの資金調達を検討します。
本記事を通して開業手順を学び、スムーズなエステサロン運営を実現しましょう。