サービスを提供する企業や店舗にとって、事前予約のキャンセルは大きな課題のひとつです。予約を受け付けたものの、直前や当日にキャンセルされてしまうと、仕入れや人員配置などのコストが回収できず、業務に支障をきたす場合があります。こうしたリスクやトラブルを軽減するためには、明確なキャンセルポリシーを策定し、事前に利用者へ周知しておくことが重要です。また、キャンセルポリシーを作成する際には、消費者契約法をはじめとした法律上のルールを守らなければなりません。高額なキャンセル料を一方的に設定してしまうと、契約そのものが無効になってしまう可能性もあるため、慎重な取り扱いが求められます。
本記事では、キャンセルポリシーを設定するうえで押さえておきたい法律上の基本ルールから、実際にポリシーを策定する際の具体的なポイントまでを詳しく解説します。また、キャンセルポリシーの例文や、予約システムを活用することでキャンセルリスクを低減する方法も紹介します。
キャンセルポリシーとは
キャンセルポリシーとは、予約や契約を行ったサービスをキャンセルする際に、どのタイミングでどのような条件や料金が発生するかを定めたルールのことです。企業や店舗でサービスを提供している場合、顧客が急な事情でキャンセルを希望することは少なくありません。特に宿泊施設や飲食店、美容サロン、医療機関、イベント運営など、事前に予約を受け付ける業態では、当日のキャンセルや連絡なしの不来店による損害を被りやすくなります。そのため、事前予約が必要なサービスを提供する際は、あらかじめキャンセルポリシーを定めておき、企業側と顧客側の双方が納得しやすい仕組みを構築することが求められます。
キャンセルポリシーが必要な理由

キャンセル防止
キャンセルポリシーを設定しておくことで、利用者側は「安易にキャンセルすると費用がかかるかもしれない」という認識を持つようになります。こうした認識は、直前キャンセルや無断キャンセルを防ぐうえで一定の抑止力として機能します。一方で、過度に高額なキャンセル料を設定するとトラブルの発生につながる恐れがあるため、法律に沿ったルールを定めることが重要です。
顧客との信頼関係構築
キャンセルポリシーの策定は、顧客との信頼関係を構築するうえで、重要な要素です。
キャンセルポリシーがあいまいで、どの段階でいくら請求されるかわからない状況だと、顧客が契約時点で不信感を抱き、利用を控える可能性があります。顧客が安心して予約できるように、わかりやすいキャンセルポリシーを提示することは、双方の信頼関係を築くためにも大切です。
業務効率化
キャンセル時の対応をあらかじめ定めておくことによって、スタッフがスムーズに対応できます。
ガイドラインがあいまいな場合、キャンセルが入るたびに個別対応が必要になり、クレームやトラブルに発展しやすくなります。明確なキャンセルポリシーを示しておくことで、スタッフはポリシーに沿って同じ対応をとれるため、無用な混乱が減り、顧客への説明も簡潔になって効率が上がります。特にコールセンターなど大量の問い合わせを扱う部門や、予約管理を担当する部署では大きな時短につながります。
キャンセルポリシーに関連する法律「消費者契約法」

キャンセル料を設定する際には、法律に基づいたルール作りが不可欠です。その中でも、特に重要なのが消費者契約法です。この法律は、事業者と消費者の間における契約の公平性を保つために設けられています。
消費者契約法とは
消費者契約法は、消費者が事業者と結ぶ契約において、その公正性を確保するために定められた法律です。特に、消費者が不利益を被ることを防ぐために、契約条項や損害賠償の設定範囲などを規定しています。
消費者契約法第9条の第1項には、契約の解除にともなう損害賠償や違約金について、事業者に生じる平均的な損害の額を超える金額を請求した場合、超えた部分について無効となることが示されています。また、第2項には、損害賠償金を支払う期日を超えて支払われない遅延損害金について、年利14.6%を超える部分については無効と定められています。
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
参考:消費者契約法(消費者庁)
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
キャンセルポリシーに記載する項目とポイント
キャンセル料金
キャンセルポリシーの中心となるのが、キャンセル料金の設定です。
キャンセル料金を設定する際に重要なのが、消費者契約法で不当とみなされない範囲に設定することです。極端に高額なキャンセル料や、社会通念上妥当な理由がないのに全額を請求するといった内容は、消費者契約法の観点から無効とされるリスクがあります。そのため、自社の実費負担や逸失利益を根拠とした、合理的な料金の設定が望ましいです。
キャンセル方法
キャンセルの申し込みは、電話やメール、オンライン予約システムのマイページなど、多様な方法が考えられます。どの方法でキャンセル手続きを受け付けるか、受付時間は何時までか、受付窓口はどこかなど、具体的に示しておくと顧客の手続きが容易になります。一方で、あまりに多様なキャンセル手段を用意すると管理が複雑になる可能性があるため、企業側の管理体制や規模に合わせた方法を検討することも大切です。
キャンセルができる期間
キャンセルが可能な期間を明確にしておくことは、顧客にとっても事業者にとっても重要な指標となります。たとえば宿泊施設やイベントでは、〇日前までなら無料でキャンセル可能、それ以降は有料となるなど、時期ごとに料金の変動ルールを設定していることが多いです。これにより、顧客は予定が変わったタイミングでキャンセルするか判断しやすくなり、事業者側もいつまでにキャンセルが入る可能性があるかを予測しながら、他の予約を受け付けられます。キャンセル可能期間は、業種特性や繁忙期かどうかなどによって柔軟に設定することが重要です。
キャンセル料が発生しないケース
天災や交通機関の大幅な遅延など、顧客側には責任のない理由で利用できないケースがあります。そうした場合のキャンセル料を免除するかどうかを事前に定めておくことで、トラブルを回避しやすくなります。例えば、医療機関や福祉関連のサービスなどでは、急な体調不良を考慮してキャンセル料の免除や特例を設けているケースもあります。こうした顧客目線の配慮があると、企業に対する印象やリピート率にもよい影響をもたらせます。一方で、事業者側にも損失が出るため、免除の範囲をどこまでにするかは慎重に検討する必要があります。
キャンセル料の免除についての詳細は、適切に設定し、わかりやすく告知することが大切です。
キャンセルポリシーの例文
以下は、サロンや整体院におけるキャンセルポリシーの例文です。自店舗でキャンセルポリシーを作成する際の参考にしてみてください。
ご予約のキャンセルについて
ご予約のキャンセル、または予約日時の変更は3日前まではネット上で設定いただけます。
当日のキャンセル・変更は、お電話にてご連絡ください。
電話番号:090-XXXX-XXXX(受付時間:○~○時)
キャンセル料について
前日までのキャンセルにつきましては、キャンセル料は頂きません。
当日キャンセルの場合は、以下のキャンセル料が発生いたします。
・当日キャンセル、または日時変更:予約料金の●%
・無断でのキャンセル:予約料金の●%
※当日キャンセルが続く場合、今後のご予約をお断りする可能性があります。
予約時間の遅刻について
ご予約時間に遅れる場合は、お早めに店舗へご連絡をお願いいたします。
15分以上の遅刻をされた場合は、施術時間を短縮させていただく場合がございます。
また、ご連絡がない20分以上の遅刻は、無断キャンセルとさせていただき、予約料金の100%を請求いたします。
なお、お客様都合による遅刻の場合、ご希望の施術ができない場合があります。
無断キャンセルの防止に効果的な予約システムRESERVA

無断キャンセルの防止に取り組む場合は、予約システムRESERVAの導入をおすすめします。
RESERVAは、導入数30万社を誇る、予約システムシェア国内トップクラスのクラウド型予約システムです。業界・業種問わずあらゆるビジネスに対応しており、350種類以上の業態で活用されています。アカウント発行から予約システム作成完了まで最短3分で導入費用は無料です。永久無料で使えるフリープランもあるため、導入コストを低くしたい・使用感を確かめてから導入したいといった事業者におすすめです。
オンラインカード決済機能(レゼルバ)
RESERVAでは独自の事前決済システム「レゼルバペイメント」を導入しており、予約時にクレジットカードによる事前決済が可能です。予約時点で決済が完了しているため、直前キャンセル・無断キャンセル防止に役立ちます。
レゼルバペイメントは初期費用・月額費用は無料で、決済時の手数料のみ発生します。お会計業務の負担軽減や業務効率化にも役立ちます。
オンラインカード決済機能についてはこちら:オンラインカード決済機能でお会計を効率化しよう!【RESERVA機能紹介】
キャンセル料設定機能
キャンセル料設定機能では、事前決済とあわせて活用することで、予約者がキャンセルした際に、キャンセル料を自動で徴収可能です。キャンセル料が発生する日数、キャンセル料金を自由に設定できます。
またRESERVAではキャンセルポリシーを作成し、予約画面や予約完了通知メール内に記載することも可能です。
予約リマインドメール
予約リマインドメールとは、予約者に対して予約日時の確認を促すために配信するメールのことです。
リマインドメールを受け取ることで、忘れていた予約を思い出してもらえるため、直前・無断キャンセルを防ぐほか、予約者への気遣い・ホスピタリティを演出する効果があります。
予約リマインドメールについてはこちら:予約リマインドメール機能で無断キャンセルを防止【RESERVA機能紹介】
キャンセル待ち機能
キャンセル待ち機能とは、予約枠にキャンセルが生じた際に、キャンセル待ちをしているユーザーに対して通知する機能です。
万が一、直前キャンセル・当日キャンセルが発生した場合でも、その予約枠にキャンセル待ちをしているユーザーがいれば、すかさず予約を埋めることができます。キャンセルが発生した際は、手動でキャンセル処理を行う必要がなく、キャンセル待ちしているユーザーへの通知から、予約完了まで自動で行われるため無駄がありません。
キャンセル待ち機能についてはこちら:キャンセル待ち機能で機会損失を防ぐ【RESERVA機能紹介】
まとめ
キャンセルポリシーは、単にキャンセル料を設定するための規約というだけでなく、企業と顧客の両方がスムーズで納得のいく取引を行うための土台になるものです。しっかりとしたキャンセルポリシーを作成し、周知を徹底することで、結果的にキャンセル防止や信頼関係の構築、業務効率の向上といった多面的なメリットが期待できます。また、予約システムを導入することで、無断キャンセル防止の推進体制をさらに強化可能です。特に予約システム「RESERVA」は、キャンセル料設定機能や予約リマインドメール、キャンセル待ち機能といった、無断キャンセルの防止に役立つ機能を数多く搭載しています。
キャンセルポリシーの策定でお悩みの人は、ぜひ本記事を参考にしてください。