近年、少子高齢化による医療サービス需要の増加で、医療従事者不足が懸念されています。医療現場では、診療に加え、ワクチン接種の受付、カルテの管理、医療器具の調達などの事務業務を並行しており、人手不足は医療機関の経営に大きな影響を及ぼします。パーソル研究所「労働市場の未来推計 2030」によると、医療・福祉業界では2030年に約187万人の人手不足となり、スタッフ1人あたりの業務量の増大が予想されています。
現在、業務効率化で医療従事者の負担を軽減すべく、「医療機関におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)化」が推進されています。消費者ニーズの変化が激しい現代では、「DX化」は経営戦略の1つであり、医療機関においては、新たなサービスの提供や患者の満足度向上につながります。今回はコストを削減しつつ高い医療サービスの提供を実現する「紙の電子化」にフォーカスして、活用すべき医療システムを紹介します。
電子カルテ
電子カルテとは、医師が患者の診療経過を記入していた紙のカルテをデータベースに記録し、一括してカルテを編集・管理するシステムです。電子カルテを導入することで以下のようなメリットが得られます。
電子カルテの導入メリット
・診療業務や情報共有の効率化
・保管スペースの減少
・リアルタイムで情報を反映
・記入ミスの防止
電子カルテシステムを比較するうえで、以下のポイントに着目します。
①費用
主に初期費用と月額料金。クラウド型は安価な値段で導入・運用できます。
②レセコンタイプ
レセコンとは、レセプトと呼ばれる診療報酬明細書を作成するシステムです。レセコンを内包した「一体型」、日本医師会標準ソフト「ORCA」やその他のレセコンと連携する「連携型」があります。既に利用しているレセコンと連携できるか、新しく乗り変える場合はデータ移行ができるかを確認しておく必要があります。
③基本機能
カルテ作成をサポートするだけではなく、予約・受付、経営分析などが一体となった多機能型システムもあります。
④システム・機器との連携範囲
Web問診システム、画像ファイリングシステム、自動精算機などの外部システムと連携できるものあります。
CLIUS(クリアス)
「CLIUS(クリアス)」は、Windows、Mac、iPadからかんたんに操作ができるクラウド型の電子カルテです。診療効率を向上させる機能や画面設計で、オリジナルのテンプレートから自動でカルテを作成することができ、在宅医療などにも対応しています。また、ストレージは無制限で、大量のカルテを管理する医療機関に最適です。
【費用】
初期費用:20万円~
月額:1万2000円~
【レセコンタイプ】
ORCA連動型
【基本機能】
予約機能、経営分析機能、院内機器連携、オーダー自動学習機能、同一・複数患者カルテ同時起動、受付管理、
適応病名チェックなど
【システム・機器との連携範囲】
60社120種類と連携可
エムスリーデジカル
「エムスリーデジカル」は、一体型、ORCA連動型など利用者のニーズによって導入方法を選ぶことができるクラウド型の電子カルテシステムです。また、AIによる自動学習機能により、シンプルな操作で処置行為を提案し、iPad Proアプリを使って、紙カルテのような感覚で診断内容を記入することもできます。約5000件を超える導入実績があり、多くの医療機関で利用されています。
【費用】
<一体型>初期費用:無料、月額:2万4800円~
<ORCA連動型>初期費用:無料、月額:11,800円~
【レセコンタイプ】
ORCA連動型
【基本機能】
予約機能、経営分析機能、院内機器連携、オーダー自動学習機能、同一・複数患者カルテ同時起動、受付管理、
適応病名チェックなど
【システム・機器との連携範囲】
60社120種類と連携可
CLINICSカルテ
「CLINICSカルテ」は、医療業務に関わるスタッフすべての業務効率化を支援するクラウド型のシステムです。日医標準レセプトソフト「ORCA」を内包しているため、受付・会計作業が大幅に削減され、高く評価されています。また、機密性の高い医療情報を扱ううえで、ISMSクラウドセキュリティ認証を取得しており、SSL暗号化通信と証明書認証により高いセキュリティ対策を実現しています。
【費用】
初期費用:カルテの使用状況によって異なる
月額:4万円(5年契約)
【レセコンタイプ】
ORCA連動型
【基本機能】
受付管理、患者登録、スケジュール管理、カルテ作成、シェーマ、スタッフ管理、薬剤情報管理、適応症・投与量チェック、会計管理、など
【システム・機器との連携範囲】
多くのシステムとの連携実績あり
きりんカルテ
「きりんカルテ」は、日医標準レセプトソフト「日レセクラウド」と連携したクラウド型電子カルテシステムです。1番の特徴は、初期費用・月額料金ともに無料で利用開始ができる点です。シンプルで機能的なデザインとなっており、無料でありながらクリニックの効率的な運営に必要な機能が搭載されています。さらに、「カルテZEROアプリ」という撮影アプリを用いて、撮った画像をカルテに登録する画期的な機能もあります。
【費用】
初期費用:無料~
月額:無料~
【レセコンタイプ】
ORCA連動型
【基本機能】
受付管理、問診登録、予約管理(アプリ予約可)、在宅診療管理、カルテ作成、シェーマ貼付、スタッフ管理、病名チェック、画像撮影アプリなど
【システム・機器との連携範囲】
画像ファイリングシステム・データ取り込み・検査オーダーなどとの連携が可能
Hi-SEED Cloud
クラウド型電子カルテ「Hi-SEED Cloud」は、長年蓄積された医療ITのノウハウを結集し、シンプルな操作画面と高度なアシスト機能で業務の効率化を進めます。様々なITソリューションシステムと連携することで、予約・受付、診察、検査、会計までを一括で管理することも可能です。また、万全なクラウドの監視体制で、非常時にも安定した稼働を実現します。
【費用】
初期費用:要相談
月額:要相談
【レセコンタイプ】
ORCA連動型
【基本機能】
カルテ作成、患者管理、検査結果管理、会計管理など
【システム・機器との連携範囲】
受付、予約、web問診、画像システム、介護支援、経営支援サービスなどと連携可
Web問診システム
Web問診システムとは、来院時に患者が紙に必要事項を記入するのではなく、Web上に記入する問診票のことです。QRコードなどをホームページに掲載しておくことで、いつでも・どこでも問診票を送信することができ、受付の混雑緩和にもつながります。
Web問診システムの導入メリット
・受付スタッフの作業時間軽減
・紙コストの削減
・待ち時間の緩和・混雑回避
・質問項目のカスタマイズが可能
Web問診システムを比較するうえで、以下のポイントに着目します。
①費用
主に初期費用と月額料金。クラウド型は安価な値段で導入・運用できます。
②基本機能
問診内容のカスタマイズや電子カルテへの転記機能、さらにはAI機能が搭載されているシステムもあります。
③システム・機器との連携範囲
Web問診システムは、電子カルテなどの外部データを連携して取り込めるものもあります。
④サポート体制
導入時のセットアップや質問項目のカスタマイズなどを、訪問やチャットで対応してくれるサポート体制が整っているシステムもあります。
WEB問診 SymView
「WEB問診 SymView」は、診断推論エンジン(診断推論のアルゴリズムなど)を搭載しており、診断に際して必要な質問を、必要な患者に絞って、事前に答えてもらうことができます。また問診内容は、電子カルテにワンタッチで自動転記され、カルテの記入にかかっていた時間を大幅に削減することも可能です。充実したサービスとかんたんな操作方法から、2020年度に「グッドデザイン賞」を受賞しています。
【費用】
初期費用:27万円~
月額:1万2000円~
【基本機能】
自動患者ラベリング機能、所見入力機能、ダッシュボード機能、カスタマイズ機能、多言語問診対応など
【システム・機器との連携範囲】
電子カルテ、予約システム各社と正式な連携
【サポート体制】
レクチャー訪問、チャットサポート
メルプWEB問診
「メルプWEB問診」は、現役の医師が自らプログラミングを組んで開発し、医療現場に寄り添ったシステムです。すべての電子カルテに連携可能で、初期設定もわずか10分で完了します。管理画面では、医師がリアルタイムで問診内容を修正でき、診療科別・検査別など約200種類のテンプレートが用意されているため、かんたんな操作でカスタイマイズすることが可能です。
【費用】
初期費用:10万円~
月額:1万5000円~
【基本機能】
問診内容・回答表示のカスタマイズ、シェーマ機能、電子署名機能、お知らせ配信、集計機能、緊急度表示など
【システム・機器との連携範囲】
電子カルテ、予約システム各社と連携
【サポート体制】
電話サポート、メールサポート
AI問診ユビー
「AI問診ユビー」は、AIが患者の症状に合わせて、最適な質問を自動生成・聴取し、同時に医療用語への即時翻訳や電子カルテへの転記を実現するWeb問診システムです。患者と医師が向き合う時間を維持しつつ、1人あたりの問診時間を3分の1に削減することができ、医師の働き方改革や医療サービスの質向上など、多くの医療機関での成功実績があります。
【費用】
初期費用:無料~
月額:1万円~
【基本機能】
問診内容最適化、医師語自動変換、参考病名リスト、紹介状作成機能、お薬検索機能など
【システム・機器との連携範囲】
電子カルテ、予約システム各社と連携
【サポート体制】
院内説明会の開催、導入当日の操作サポートなど
勤怠管理システム
勤怠管理システムとは、従業員の出勤・退勤時刻の記録やシフト管理、給与の集計などを一括管理するシステムです。医療機関は、夜勤など複雑な勤務形態やシフト変更が頻繁あり、リアルタイムでの勤怠確認は大幅な業務効率化につながります。
勤怠管理システムの導入メリット
・多様な職種に合わせたシフトの作成
・リアルタイムで勤怠時間を集計
・残業の超過通知機能
・モバイル端末での打刻が可能
勤怠管理システムを比較するうえで、以下のポイントに着目します。
①費用
主に初期費用と月額料金。クラウド型は安価な値段で導入・運用できます。
②基本機能
勤怠管理、出退勤時の打刻、シフト作成機能などが搭載されています。近年の働き方改革によって、改正された時間外労働上限対応したシステムもあります。
③サポート体制
導入時のセットアップや運用サポートなどを、電話やチャットで対応してくれる体制が整っているシステムもあります。
jinjer勤怠
「jinjer勤怠」は、複雑な勤務形態の集計を自動化し、従業員情報とともに勤怠実績や給与計算を1つに集約するシステムです。GPS打刻でテレワークや在宅勤務などの多様な働き方が進む医療機関でも、スマートフォンやタブレットなどで打刻を行うことが可能です。
【費用】
初期費用:要相談
月額:300円~/1ユーザー(従量課金制)
【基本機能】
モバイル打刻機能、勤怠データ自動集計機能、ワークフロー作成機能、出勤・休暇管理機能、アラート機能など
【サポート体制】
チャットサポート、電話サポートなど
Touch On Time(タッチオンタイム)
「Touch On Time」は、独自開発のタイムレコーダーで誰でもかんたんに打刻操作ができる勤怠管理に特化したシステムです。指紋認証、ICカード、ID・パスワードの3通りで打刻を行うことができ、不正打刻の防止に役立ちます。打刻情報は自動でアップロードされ、労働時間の合計や休暇の状況を確認することが可能です。
【費用】
初期費用:無料
月額:300円~/1ユーザー(従量課金制)
【基本機能】
打刻機能、勤怠データ自動集計機能、ワークフロー作成機能、出勤・休暇管理機能、アラート機能、働き方関連法対応など
【サポート体制】
電話サポート、30日間無料トライアルの提供など
KING OF TIME
「KING OF TIME」は、目的に合わせた多彩な打刻方法が特徴的な勤怠管理システムです。指紋認証、静脈認証、ICカード、ID・パスワード、顔検知などで打刻を行うことができ、勤怠情報は、Excelファイルなどへのエクスポートが可能です。さらにビジネスチャットツールとの連携で、現場コミュニケーションの円滑化にも役立ちます。
【費用】
初期費用:無料
月額:300円~/1ユーザー(従量課金制)
【基本機能】
打刻機能、他拠点との連携機能、リアルタイム集計、残業時間管理、休暇管理機能、シフト作成、CSVファイルエクスポートなど
【サポート体制】
電話、チャット、オンラインヘルプ、30日間無料トライアルの提供など
ADVANCE勤怠クラウド Hospital Edition
「ADVANCE勤怠クラウド Hospital Edition」は、医療機関の複雑な勤務形態に対応した勤怠管理システムです。宿直、夜勤シフト、48時間までの勤務シフトなど1000種類以上が登録可能で、医療機関に必要な「入院基本料等の施設基準に係る届出書添付書類(様式9)」を出力することもできます。
【費用】
初期費用:要相談
月額:要相談
【基本機能】
GPS打刻機能、申請承認、リアルタイム集計、残業時間管理、休暇管理機能、帳票の出力、シフト作成、働き方改革関連法対応など
【サポート体制】
導入・設定変更サポート(Premiumライセンス)
電子お薬手帳
電子お薬手帳とは、過去に使用した薬の情報が記録されている紙の手帳を電子化し、利用者のスマートフォンなどで管理するシステムです。2011年の東日本大震災時に、紙のお薬手帳を失い、服用情報の確認が困難であったことから、電子お薬手帳の普及が進みました。
電子お薬手帳の導入メリット
・持ち忘れの防止
・家族の情報を共有・確認
・処方時間の軽減
電子お薬手帳を比較するうえで、以下のポイントに着目します。
①使用料
主に登録料や追加料金など。
②お薬手帳以外の機能
調剤予約や健康管理などと連動しているアプリもあります。
EPARKお薬手帳アプリ
「EPARKお薬手帳」は、家族のお薬管理や日々の血圧管理を行うことが出来るスマートフォンアプリです。事前に調剤予約をすることで、待ち時間の短縮や移動先での受け取りが可能になります。
【使用料】
無料
【お薬手帳以外の機能】
薬局予約、血圧登録、家族登録、服用カレンダー、医療費控除のデータ出力、予防接種記録など
お薬手帳プラス
「お薬手帳プラス」は、日本調剤が開発したアプリで、薬に関する情報だけではなく、健康管理に役立つ機能が多く搭載されているのが特徴です。体重や血圧などを記録する体調管理や全国で流行している感染症情報を確認することができます。
【使用料】
無料
【お薬手帳以外の機能】
健康管理、健康コンテンツ情報、服用カレンダー、家族管理、医療費控除のデータ出力など
日薬eお薬手帳
「日薬eお薬手帳」は、日本薬剤師協会が提供するアプリで、従来の紙のお薬手帳と似た形式で、薬の管理や処方箋の送信などを行うことができます。
【使用料】
無料
【お薬手帳以外の機能】
服用カレンダー、処方箋画像送信機能など
医療機関の予約システムならRESERVA
今回紹介した電子カルテ・Web問診のようなシステムの多くは、予約システムと連携することで、さらなる業務効率化を進めることができます。26万の事業者・官公庁に導⼊されている国内最⼤級のSaaS型予約システムRESERVA(https://reserva.be/)は、医療機関向けの予約システムや、新型コロナワクチン接種の予約受付に特化したシステム「新型コロナワクチン接種予約システム by RESERVA」を提供しています。2024年現在、「新型コロナワクチン接種予約システム by RESERVA」は350超の自治体、医療機関、クリニック、企業などで、ワクチン接種の予約を導入いただいています。
RESERVA新型コロナワクチン接種予約システム 特設サイト
<RESERVAの導入を決定したポイント・メリット>
1.導入決定後、最短3営業日で稼働
2.インターネットで24時間病院・クリニックの予約を受付が可能
3.システムが苦手なスタッフでもかんたんに使えるわかりやすい管理画面
4.直前予約・指定時間での締め切りの設定が可能
5.国内データセンターで情報を安全に管理(安心安全なセキュリティ体制)
まとめ
今回は、医療機関の業務効率化を進めるおすすめのシステムを紹介しました。医療業務の「DX化」は、コスト削減だけではなく、AIを利用した治療法の提案やオンライン診療など新たな医療サービスの提供を実現させます。医療体制の見直しが図られている状況下で、既に導入されているシステムを確認し、少しでも医療スタッフの負担を軽減できる方法はないかを考えることが重要です。