国内ではクリニック経営者の高齢化や、コロナ禍での外来患者の減少による経営悪化により、休廃業する医療機関が急増しています。さらに少子高齢化の影響による競争激化は避けられず、町のクリニックをはじめとした各医療機関は生き残りをかけて「患者に選ばれる」取り組みが欠かせません。
その中で注目を集めているのが、医療機関の「オンライン診療」です。オンライン診療は、従来対面で行っていた診療を電話やオンライン上で行うものであり、患者さんは通院をせずとも、診療や服薬指導を受けることができます。
本記事では、国内のオンライン診療の普及状況と、オンライン診療導入に向けて解決すべき課題について解説します。
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オンライン診療とは
オンライン診療とは、医師と患者が離れた場所からリアルタイムで行われる診療方法です。患者は医療機関に出向くことなく、パソコンやスマートフォン、タブレット端末を用いて診療を受けることができます。
オンライン診療で薬の処方を受けた場合、処方された薬剤は自宅に配送してもらうことも可能であり、患者は医師や薬剤師と対面することなく、診療から薬剤の受け取りまで行うことができます。
オンライン診療の背景
オンライン診療は2018年の診療報酬改定で保険適用されましたが、対象となる疾患が限定的でした。また初診時からのオンライン診療は原則認められておらず、一定期間の対面診察の継続が必要とされていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、厚生労働省では時限的・特例的な対応として、初診も含め、医師の判断で電話・オンラインでの診療が可能としました。
参照:オンライン診療の適切な実施に関する指針(厚生労働省)
参照:新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について
オンライン診療に期待される役割
オンライン診療の最大のメリットは、医療機関に行かずとも診察を受けられることです。特に日本は少子高齢化の影響により、高齢者の外来受診者数が減少するといわれています。患者自身の、身体的・精神的、あるいは認知機能の低下により、物理的に医療機関にいくことが困難になると予想されています。
そのため、オンライン診療による、経過観察が果たす役割は非常に大きいと期待されています。実際にオンライン診療を利用したことで、患者の満足度が上がったと回答した医療機関が6割を超えており、多くの医療機関が導入後の効果を実感しています。
オンライン診療の課題
一方で、初診時からオンライン診療・オンライン服薬指導が認められているのは、新型コロナウイルス感染症がまん延している期間だけの特例措置であることを注意しなければなりません。なぜなら、オンライン診療は画面越しの診察と問診のみで行われるため、対面診療と比べて患者から得られる情報が限定されるからです。
つまり、医師と患者間の信頼関係が前提の上で成り立っています。医師としては限られた情報で診察を行うことは様々なリスクを抱えることになります。患者側も効率性だけでなく、そうした性質を理解した上で、最終的には自己責任という覚悟を持つ必要があります。例えば、経過観察に限定するなど、オンライン診療をいつ・だれに・どのように適用させるかは慎重に進めなければなりません。
国内オンライン診療の現在地点
現在日本国内において、オンライン診療はどこまで進んでいるのでしょうか。ここでは、都道府県別医療機関のオンライン診療導入ランキングと、患者側の利用率について解説します。
都道府県別医療機関のオンライン診療の普及率ランキング
厚労省が発表した「電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」によると、電話を含めたオンライン診療を実施できると登録した医療機関は、2021年4月末時点で16,843件となっており、全体の約15%程度であることがわかりました。
ただし、都道府県別でみると格差が大きいこともわかります。最も届け出数が多いのが、東京都で、続いて神奈川県、大阪府、愛知県と大都市が続いており、人口が密集する都市圏を中心に普及が進んでいます。
対して、当然医療機関の数は都市部と地方では差がありますが、各都道府県の登録機関数の割合で見ても、地域間の差が広がっていることがわかります。
患者側のオンライン診療利用経験率
続いて、患者側のオンライン診療の利用率をみていきます。MMD研究所が2020年10月~11月に行った調査によると、オンライン診療の利用経験者は全体の約18%にとどまっています。
本記事を執筆している2021年12月時点では、調査時点よりも増加している可能性はあるものの、全体的な普及には遠い段階であることは間違いありません。
一方で、オンライン診療に興味が低いわけではありません。オンライン診療に関心があるどうかを質問したところ、「非常に関心がある」が13.0%、「どちらかと言えば関心がある」が39.6%となっており、合計で52.6%がオンライン診療に関心を示していることがわかりました。
これは特定の年代に限った話ではなく、どの年代でも半数以上が関心を寄せています。実際に、オンライン診療の利用経験がある方に、オンライン診療について質問したところ、「オンライン診療が増えてほしい」と回答した方が66.7%と回答したことがわかりました。
これらの結果から、多くの方がオンライン診療の利用を前向きにとらえているといえます。
オンライン診療に向けた取り組み
現在、オンライン診療を導入すべきか迷われている医療事業者も多いでしょう。ここでは、オンライン診療導入時に念頭におくべき課題と、具体的な導入方法について解説します。
オンライン診療導入時の課題
オンライン診療は今後普及が期待されていますが、オンライン診療が全体に行き届くためには、数多くの課題が残っています。
特に、オンライン診療を実施した医療機関が経験したトラブルでは、通信不良により患者とコミュニケーションが取れなかった、あるいは診療そのものが行えなかったことが多く挙げられています。オンライン診療システム導入を検討する際は、安定した通信を実現できるシステムを導入すべきといえます。
具体的な対応策としては主に2つあります。1つはシンプルな操作で扱えるシステムを導入することです。医師側・患者側ともにITツールの扱いに不慣れな場合は、思うように操作ができず、途中であきらめてしまう可能性があります。そのため、複雑な操作を必要とせずに、わずかな操作だけでオンライン診療が開始できるシステムを選択するようにしましょう。
2つ目は、接続環境を見直すことです。Web会議で回線速度が遅くなる理由としては以下が挙げられます。
- パソコンに問題がある(スペックが古いなど)
- 不必要なソフトを起動しすぎている
- インターネット接続環境が悪い
- 回線に問題がある(ADSL回線を利用しているなど)
- プロバイダー側で問題が発生している
プロバイダー側で問題が発生している場合は自分たちでは対処のしようがないため、障害情報が出ていないか確認し、改善を待ちましょう。
オンライン診療の導入方法
ここでは、オンライン診療を導入するため手順を解説します。
1. オンライン診療システムの購入・申し込み
まずは導入するオンライン診療システムを選定します。システムごとに機能や特徴、利用費用の違いがありますので、それらを考慮の上導入するシステムを決定します。
2. オンライン診療用のパソコンのセットアップ
導入するオンライン診療システムの動作環境を確認し、適したパソコンを導入します。またWebカメラ、マイク、スピーカー(イヤホン)なども準備します。
3. 厚生局へ届け出
保険診療を行う場合は、厚生局へ施設基準の届け出が必要ですので、届け出用紙に必要事項を記入し、提出します。保険外診療の場合は届け出は不要です。
4. 対象患者と、オンライン診療計画書の合意を得る
患者さんの疾患・症状・生活などを考慮した上で、オンライン診療の実施を行う患者さんを決定します。その後、診療計画書を作成し、患者さんからの合意を得ます。
5. 対象患者へのオンライン診療操作の説明
患者さんはオンライン診療システムをパソコンやスマートフォンアプリにて操作するため、操作方法について案内します。マニュアルを作成するなどして、スムーズに登録・オンライン予約ができるようにサポートします。
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オンライン診療システムの普及に向けて、現在数多くのサービスが登場しています。各システムによって、特徴や機能、利用費用は異なるため、目的・用途に合ったシステムを選択しましょう。
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