マイナンバーで行政をDX化する取り組み|地方自治体・海外での事例を紹介

マイナンバーで行政をDX化する取り組み|地方自治体・海外での事例を紹介

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現在、世界各国で電子政府(デジタル・ガバメント)への転換を目指し、デジタル技術を用いて行政サービスを効率化、国民の生活を便利にする「行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)」が進められています。

日本では行政のDXを推進するため、2016年1月にマイナンバー制度が導入され、行政のDX化に一翼を担うことが望まれています。実は、国民に個人番号を振って情報管理するという仕組みは、日本以外の様々な先進国で行われています。

そこで本記事では、マイナンバーを活用して行政DXに取り組む日本の地方自治体や、海外におけるマイナンバーの活用事例などを紹介します。

マイナンバーとは

マイナンバーとは、国民1人ひとりに固有の番号を振り分けることで、国民を識別しやすくする制度です。個人情報とマイナンバーを紐づけすることで、マイナンバーを用いて個人情報を一括で管理できるようになるため、行政のDXを加速させることが期待されています。しかし、日本におけるマイナンバーカードの普及率は34.2%(2021年7月1日時点)と高くありません。また、現在個人情報とマイナンバーの紐づけは国および地方公共団体情報システム機構(J-LIS)で管理されているため、自治体がマイナンバーとその個人情報の管理を支配することはできません。

画像:政府資料を基にRESERVA Digitalで作成

自治体がマイナンバーを基に住民の個人情報を取得するためには、国が管理するマイナンバーコアシステムにアクセスする必要があります。そのシステムに、自治体が持っている独自の符号とマイナンバーを提供することで各個人情報を取得できます。この一連の手順があるため、自治体はマイナンバーを利用した独自の個人情報管理システムを構築しようとしても手間がかかり、なかなか実現できない状況にあります。その中で、自治体でマイナンバーを用いたシステムを構築・導入し、行政のDXに取り組んでいる事例を紹介します。

日本の自治体におけるマイナンバー活用事例

現在、日本全国の様々な自治体がマイナンバーを利用した行政のDX化を進めようとしています。2019年時点で約70の自治体が各種証明書発行支援サービスにマイナンバー制度を導入し、マイナンバーカードを使って自動交付機やコンビニエンスストアで各種証明書を受け取れるようになっています。次に示す自治体は、証明書の自動発行以外でもマイナンバーを使い、行政や公共のDXを推進しています。

群馬県前橋市

1.母子健康情報サービス

前橋市では、同市に拠点を置くICTまちづくり共通プラットフォーム推進機構、通称TOPIC(トピック)が提供する母子健康情報サービスを導入しています。母子に関する定期健診や予防接種などの情報を一元管理することにより、行政の効率化だけでなく子育ての支援にもつながっています。自宅からスマートフォンやパソコンを用いて予防接種や健康診断の情報を取得できるようになり、母子手帳を紛失してしまった際などに役に立っています。

将来的には未就学児に限らず、対象者を小中学生や成人、高齢者と広げ、成育歴や体重・身長、持病・病歴などの情報を集約一元化し、本人が閲覧できるようにするPHR(パーソナルヘルスレコード)の構築を目指しています。加えて、ビッグデータとして分析して新たな市民の健康づくり施策などへ反映させることも想定されています。

2.高齢者などの移動支援

前橋市は高齢者などの移動困難者に向けてタクシー運賃補助「マイタク」を2016年から実施しています。今までは紙の利用券で運営を行っていたため、利用券の回収やデータ入力・確認がかなり手間になっていました。そこでマイナンバーカードを利用して利用券を電子化、さらにデータの入力を自動化することにより行政のDXを実現しました。それだけでなく、利用者の利用券忘れや紛失を防ぐことができ、利用者の利便性向上にもつながっています。

新潟県三条市

1. 選挙の投票入場受け付け

三条市では、期日前投票や当日投票の入場受け付けでマイナンバーカードを提示することで、顔写真で本人確認を行った上で瞬時に受け付けを完了できます。期日前投票では、宣誓書をシステムで出力するので、手書きが困難な人もかんたんに待ち時間無く投票が行えます。当日投票では、すべての投票所に受け付け専用端末を配置し運用することで、住民の待ち時間の短縮と職員の負担軽減を実現しました。また、マイナンバーカードで本人確認が完了するため、入場券を忘れてしまった人も手間なく入場受け付けができるようになり、より便利な投票環境を構築できています。

2.職員などの出退勤管理

三条市では、過去に大水害発生時の災害対応のため、職員が不規則勤務となり、多くの職員が体調を崩してしまう事態が発生しました。多くの職員が欠勤してしまうと、人数が足りていない部署などが生じ、業務に多大な影響が出てしまいます。そのため、出退勤を随時チェックして勤務状況を瞬時に把握する必要性を強く感じ、システムの導入に踏み切りました。主に市役所や小中学校などで導入され、マイナンバーカードで出退勤管理を行うことにより、職員のサービス残業のチェックが容易になるなど、労務管理や健康管理の徹底や庁舎管理の簡素化にもつながっています。

滋賀県日野町

マイナンバーによるコロナワクチン接種予約

日野町は新型コロナウイルスワクチンの接種予約に、スカラとPublic dots & Companyが2社共同で開発したマイナンバーを用いたワクチン接種予約システムを導入し、実証実験を行いました。同システムは紙の接種券に代わり、スマートフォンに表示させた「xID(クロスアイディー)」を利用して、会場での受け付けを速やかに行えるものです。マイナンバーカードを読み込み、予約サイトで予約日を選択し、名前や電話番号を入力すると接種予約が完了します。接種当日には、スマートフォン上のxIDを受付職員に見せることで照会を行い、受け付けが完了します。マイナンバーを用いることで、紙の接種券よりも迅速に受け付けが行えるだけでなく、確実な本人確認が可能になるため、不正利用などを防止できる効果も見込めます。

海外でのマイナンバー活用事例

海外には、日本よりも行政のデジタル化が発達し、多くの行政サービスがマイナンバーを使って便利に利用できる国があります。次に示す2カ国は、日本のマイナンバーにあたる制度を導入することで見事に電子政府化を果たし、個人情報を一元化することに成功しています。

デンマーク

デンマークは、日本のマイナンバーに相当する「CPR」を導入しています。デンマークでは、生後2~3時間後にCPRが付与され、ほとんどの行政サービスを利用する際にCPRが必要となります。銀行口座などもマイナンバーに紐づけされるため、児童手当などは申請の必要がなく、自動で母親の口座へと支給される仕組みになっています。また、デンマークではCPRを利用した個人のEメールボックスが作られ、公的機関や民間事業者からのお知らせがEメールで届く仕組みになっています。そのため郵便物はほとんどなくなり、事務作業の負担軽減につながっています。新型コロナウイルスのPCR検査でも、CPRを使った迅速な検査と検査結果の通知が可能となっています。予約なしでPCR検査を受ける場合も、受け付けから検査まで2~3分で完了するので、利用者のストレスはほとんどありません。

エストニア

エストニアは資源が少なく、人口も少ないため少子高齢化の危機を迎えましたが、ICTが国を強くするという考えのもと、見事に電子政府化を果たしました。行政サービスの約99%が電子化されており、エストニアのマイナンバーである「eID」を使ってオンラインで各サービスを受けられます。eIDカードは運転免許証や交通系ICカードなどの役割が集約しており、1枚で様々な個人情報が一元化されています。例えば、オンライン上で確定申告や大学への入学願書申請などがeIDを使って利用できます。このような電子政府においては、個人情報にアクセスしやすくなるため、国民だけでなく、勤務する職員の仕事もスムーズになります。一方で、個人情報を誰が閲覧したかも記録され、本人に分かるようになっているため、個人情報がむやみに濫用されることもありません

【考察】日本のマイナンバーのこれから

日本各地の自治体でマイナンバーを利用した行政のDX化が進められ、少しずつ形になっています。しかし、デンマークやエストニアのような大規模なDX化を実現させるには、国主導のデジタル改革が必須です。デジタル改革のカギを握るマイナンバーカードの普及を加速させるためにも、日本政府や各自治体は個人情報が確実に守られる制度設計の構築とその詳しい説明を行い、国と国民の間での信頼関係を醸成することが不可欠だと考えられます。また、実証実験などを行うことで、マイナンバー制度が社会インフラの1つとして国民と国の双方にメリットがあることと、その内容が正しく理解されることも重要です。

現在、日本でもマイナンバーカードが健康保険証としての利用が整備されています。対象の医療機関ではすでに利用可能で、マイナンバーカードをカードリーダーにかざすことで保険証としての役割を果たします。予定では2021年10月から薬剤や医療費の情報がマイナポータルから参照できるようになります。

マイナポータル・・・
マイナポータルは、政府が運営するオンラインサービスです。子育てや介護をはじめとする、行政手続の検索やオンライン申請がワンストップでできたり、行政機関からのお知らせを確認できたりします。

さらに、2024年度には免許証との一体化が予定されているなど、国を挙げた大規模なマイナンバー政策が動き出しているため、今後日本の生活におけるマイナンバーカードの重要性が増していくことは間違いないでしょう。

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まとめ|参考

今回は、日本の自治体や海外におけるマイナンバー制度の活用事例について紹介しました。現在の日本では自治体主導でマイナンバーを活用した個人情報管理システムの構築を行うことは容易ではありません。しかし、企業などと協力して実証実験を行うことで、市民に対して信頼関係の構築やメリットの理解を深めることは可能です。まだ海外の事例には遠いかもしれませんが、できることからデジタル化していくことが重要です。ほかの自治体や海外の事例を参考に、行政のDXを進めてみてはいかがでしょうか。

参考
諸外国における国民 ID 制度の現状等に関する調査研究報告書
マイナンバーカードの普及・利活用に係る積極的取組事例集

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