ユーザーの代わりに Googleアシスタントが電話をかけて予約してくれるサービス・Google Duplexをご存知でしょうか。Google DuplexはGoogleが2018年に発表した、AIを活用した自動音声通話技術による自動予約サービスで、これまでにない「リアル」なAIとの会話を実現しています。
この先Google Duplexは全世界で普及していくとともに、Google Duplexに関連した新たなビジネスモデルも続々と生まれていくことが予想され、世界でも注目を浴びています。
この記事では、そもそもGoogle Duplexとは何なのか、Google Duplexでできることや、現在の利用可能地域などを解説していくとともに、日本の「予約」におけるGoogle Duplexの影響についても考察していきます。
Google Duplexとは
Google Duplexとは、AIを活用した高いレベルの自動音声通話技術によって、レストランや美容室などの予約を人間の代わりに行うGoogleのサービスです。
「Ok, Google」の呼びかけで起動するGoogleアシスタントに、例えば「近くの美容室を予約して」と音声入力することで、Google Duplexが自動で美容室に電話をかけ、予約を行います。
レストランや美容室だけではなく、ホテルや映画のチケットも予約することが可能です。
同サービスは従来のチャットボットのような、あらかじめプログラムされたレスポンスのみにとどまるようなものとは違い、双方向のコミュニケーションを行うことが可能です。
また、同サービスのポイントは、会話の内容だけでなく、音声的な表現までもがリアリティを持っているところにあります。
「Hmm」「Uhh」といった会話の乱れまでもを再現することが可能で、これにより、AIと対話する人間が、機械音声と会話しているときの独特の不快感を感じずに会話を行うことができます。
2018年に発表された同サービスは年々アップデートを重ね、現在は世界の一部地域で利用が可能です。
2023年11月現在、日本国内ではサービスを提供していません。
サービス提供開始後間もない2019年時点では、同サービスによる予約電話の25%は人間のGoogleのオペレーターがかける必要がありました。残りの75%はDuplexの自動音声によって店舗側に電話がかけられ、予約の手続きを試みるも、うち19%は人間のオペレーターが介入し予約を完了させなければならないことがあったようです。(情報参照元:「GoogleのAIが予約申し込み電話をかけるDuplexの25%は人間がかけている」(TechClunchJapan))
また、Google Duplexからかかってきた電話を、レストランの従業員が自動化されたスパムによる迷惑電話と混同してしまう、というケースも多々あったそうです。
新型コロナウイルスの流行により休止していたビジネスが順次再開され、消費行動の再活性化が見込まれる中で、Duplexはどれだけの成果を上げることができるのかが注目視されています。
Duplexを利用する利点
Duplexの利用には、企業、ユーザーの双方に様々な利点があります。
Duplexを利用する企業は、オンラインシステムを利用していないため、日々の業務を変更したり、従業員を特別に教育したりすることなく、Googleアシスタントを使ってユーザーの予約ができるようになります。
また、Googleアシスタントを通して、ユーザーに予約のキャンセルや変更が簡単にできるようにリマインドすることで、予約の無断キャンセルを減らすことができます。
さらに、休日の営業時間など、オンラインでは公開されていない情報について、ユーザーが企業に電話で問い合わせることがあります。
Duplexはユーザーの代わりに企業に電話して営業時間を問い合わせ、その情報をGoogleでオンライン公開することで、企業が受けるこのような電話の数を減らすと同時に、誰もがその情報にアクセスできるようにします。
企業は、このシステムの恩恵を受けるための教育や変更を必要とせず、これまでと同じように業務を行うことができます。
ユーザーにとっても、電話をかけるのには通話料金がかかりますし、時間的なコストもあります。そうした手間やコストを省くことができるのは、デジタルに慣れた現代のユーザーにとっては魅力的であると思われます。
また、Duplexはアクセシビリティや言語の問題へのソリューションでもあります。Duplexを提供するGoogle Androidの利用者には、聴覚障がい者や、現地の公用語を話せない移民など、様々なユーザーが存在します。
ユーザーに代わり自動で予約を行うことのできるDuplexは、 そうした利用者層にとっては非常に有用なサービスといえるでしょう。
Google Duplexの利用可能地域
現在、Google Duplexはアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、スペイン、メキシコ、インドの、一部地域で利用が可能です。(情報参照元: 「Googleアシスタントが自動で電話予約、Duplexが日本でも提供開始か?」(海外SEO情報ブログ: 2020年10月29日 投稿記事) )
現在はまだ日本ではサービスが提供されていませんが、他サイトの記事「Googleアシスタントが自動で電話予約、Duplexが日本でも提供開始か?」(海外SEO情報ブログ: 2020年10月29日 投稿記事)によれば、近いうちに日本でDuplexの提供が開始される可能性もあるかもしれないとのことです。
Google Duplexはアメリカでのサービス開始以来、各地域の法律や言語に合わせた改良を繰り返し、提供地域を広げてきました。
一般的に難解な言語であるといわれる日本語ですが、日本でサービスが開始された際にはどこまで流ちょうな表現が可能なのか、非常に楽しみです。
Duplexが国内の予約手法に及ぼす影響
すでにRESERVA予約システムをはじめとする様々な予約システムが存在する国内予約システム業界ですが、仮にDuplexが国内でサービスを開始した場合、どのような影響があるのでしょうか。
実際はそれほど普及しないかもしれない?
国内ではすでに 、飲食店や美容室に特化したものから様々なサービスに対応した総合型のものまで、非常に多くの予約システムが存在し、そしてユーザーもまた、それらを使い慣れています。
Google Duplexは自動で予約ができるといっても、予約をするにはGoogleアシスタントを起動して音声入力を行わなければならないので、WEBサイトから好みの店舗を見つけ、その店舗の予約ページから予約するといった手間と比較すると、どちらが簡単、スムーズかは判断の分かれるところでしょう。
また、現時点ではDuplexからの予約は電話で受け付けなければならないので、予約を受け付ける店舗の人的コストが増大する可能性があります。そのため、店舗側からしてもDuplexを積極的に利用されることはあまり嬉しくないかもしれません。
さらに、日本はDuplexがすでにサービスを開始しているアメリカやイギリス、オーストラリアなどに比べると、公用語を話すことのできない移民の数も少なく、そういったDuplexのニーズも多いとは言えないでしょう。
そうした理由から、仮に日本国内でDuplexがサービスを開始したとしても、従来の予約システムの利用者を減少させる可能性は少ないと考えられます。もともと予約サイトや予約システムを利用せず、電話で予約をしていた層には、Duplexは一定のニーズがあるかもしれません。
Googleアシスタントの進化で大化けする可能性も
一方で、Duplexは非常に大きな可能性も秘めているといえます。
普段私達がこだわりのレストランを探すときには、インターネットで口コミサイトを見たり、あるいはSNSで話題の店舗を見つけたりしていると思います。もしこうした検索作業を、Googleアシスタントが代わりにやってくれるとなったらどうでしょうか。
現在のGoogleアシスタントの機能では、「ここから1㎞以内のラーメン屋さんを教えて」といった、距離やジャンルのみを指定する比較的かんたんな質問であれば、すぐに返答することができます。しかし、「ここから徒歩圏内でクワトロフォルマッジが食べられるレビューの高い個人店を教えて」といった具体的な情報が入った質問になると、現在のGoogleアシスタントでは返答が難しくなってきます。
将来、Googleアシスタントに使われているAIが進化して、こうした細かな情報までも理解・検索できるようになれば、Googleアシスタントの検索機能は非常に強力なものになり、それに付随してDuplexの自動予約も魅力的なものになってくるのではないでしょうか。
また、Duplexからの予約を、電話を取らずに自動で受け付けることのできるサービスなどが開始されれば、Duplexは店舗にとっても有用なサービスになりうるでしょう。
まとめ
今回はGoogleの開発した自動予約サービス「Duplex」をご紹介しました。
Duplexは国内ではまだ提供されていませんが、日本に上陸したときには非常に魅力的なものとなることが予想される、注目のサービスであることがお判りいただけたかと思います。