【2024年版】自治体DX化取り組み実態調査レポート|神奈川県横浜市

【2024年版】自治体DX化取り組み実態調査レポート|神奈川県横浜市

更新

近年、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)、ICT、IoTといった言葉を耳にする機会が増えました。新型コロナウイルスの影響で、テレワークの推進や業務のリモート化などが急務となったことにより、DX化に向かう流れになったことが主な要因と考えられます。

加えて、SDGsの達成に向けてもDX化は重要な取り組みです。DX化による業務の効率化や省人化は、SDGsの達成にはほとんど必須であると考えられていますし、同時に日本が直面する人口減少への対応策になっています。そのため、コロナ後の社会に向けて、DX化を活発に進めている自治体や企業が増えています。

一方で、DX化には課題も多く、なかなか取り組みが進まない自治体も少なくないと思います。そこで本記事では、DX化へ積極的に取り組む先進的な自治体を取り上げ、独自に設けた評価項目で採点し、その取り組みのポイントをかんたんにまとめてご紹介します。

自治体DX化の取り組み評価

目的と方法

これからDX化に向けて取り組む自治体や企業に向けた情報発信を目的として、DX化に積極的に取り組む自治体における「DX化の現状」「DX化に向けた課題」を整理し、実際の事例や画期的な取り組みをピックアップして解説していきます。

「DX化の現状」について、当社では、取り組みの進行度やDXの充実ぶりを可視化するために、当社予約システムに関する全国の自治体からのご相談、お問い合わせ、受注実績やノウハウを基にして、自治体におけるDXの取り組みについて31の評価項目を独自に作成しました。

自治体DX化の取り組み評価では、この評価項目を元に評価、採点を行っていきます。

評価項目

作成:RESERVA編集部

現時点での課題

  • DX人材の不足
    現状、日本においてDX化に携わる人材が不足しており、企業・自治体を問わずDX化を推し進める上での障壁となります。既にスキルを持っている人材を獲得、あるいは人材の育成に取り組むか、または人材を確保している企業と組んで外注するか、いずれにせよDX化に向けて確実に解決するべき問題です。
  • DX化、ICT活用の専門部署がない
    日本の組織の多くはIT戦略を含めたDX化、ICT活用を行う部署が用意されていません。日本の行政機関としてデジタル庁が新設された事は記憶に新しく、DX化を推し進める上の方針の設定や施策を推進する上で専門部署の設立は必要だと考えられます。
  • 地域ごとの財政規模、財源の違い
    財政規模や財源の違いによって、DX化に向けた投資に踏み切れない自治体は多いと思います。DX化を進めることで財政の立て直しやサービス向上など付加価値が得られ、自治体としての価値を高められるのですが、実例がまだ少なく手を出しにくいのが実情のようです。
  • 住民本位の取り組みになっているか
    DX化は単なる業務の効率化のこと、あるいはICTと混同されがちなキーワードです。DX化の最大の目的はサービスの質や生産性の向上であり、市民に寄り添いながら、本当に市民が求めていることは何か、その上で取り組むべきことは何かを精査していく必要があります。
  • 多言語への対応が可能になっているか
    日本に在留している外国人は令和3年6月時点で約282万人で、日本の人口の約2%に相当します。SDGsなどの観点から見ても、各自治体において多文化共生社会の実現は重要な目標であり、その一端を担う在留外国人への取り組みが必要であることは間違いありません。

DX・ICTの違い

ICTは「Information and Communication Technology」の略で、「情報通信技術」のことです。メールやSNS、チャットなど、情報をやり取りするためのサービスを指すほか、近年のAI、IoT化の進展により世界的にその技術領域は拡大しつつあります。
DXは「Digital Transformation」の略称であり、直訳すると「デジタル変革」です。DX化はICTやIoT(Internet of Things)をツールとして利用して日常生活やビジネスの質を高めることが目標となっています。
ICTの活用はDX化に含まれますが、DX化はICTの活用を含めた様々なアプローチで実現されるものというのがポイントです。

横浜市の評価と解説

当社独自の調査項目に照らし、横浜市の得点は31点中29点という全国でもトップクラスの結果になりました。AIチャットボットの導入や行政手続きのオンライン化などDX化を推進していることが分かりました。そんな横浜市の取り組みの中から特に注目されるポイントについて解説します。

評価結果

作成:RESERVA編集部

AIチャットボットの導入

横浜市は2021年3月より、横浜市AIチャットボットの運用を開始しました。暮らしや教育、健康や医療福祉、戸籍や税など、市政全般に関する住民からの問い合わせをAIによって回答することができます。これによって、24時間365日住民が質問することができるようになり、市民サービスの向上につながりました。また、新型コロナワクチンについては専用のAIチャットボットを別途導入し、ワクチンに関する質問や、ワクチン予約をチャットボットから受け付けています。
横浜市AIチャットボットは横浜市公式ホームページのトップ画面から、新型コロナワクチン専用チャットボットは横浜市公式ホームページの新型コロナ特設ページから、それぞれ利用することができます。

行政手続きのオンライン化

横浜市は、オンラインシステムや電子決済システムの導入によって、行政手続きのオンライン化を推進しています。例えば、住民票の写しや戸籍証明書などの書類はスマートフォンから本人確認を行うことでオンライン申請が可能になっており、申請から1週間程度で書類が自宅に郵送されます。また、市民税や固定資産税、軽自動車税については、スマホ決済での納付を受け付けています。
(参考:住民票の写し・印鑑登録証明書・戸籍証明書・身分証明書のオンライン申請|横浜市公式ホームページ
(参考:スマホ決済(バーコード読み取り)での納付

SNSの活用

横浜市は、SNSを積極的に活用した情報発信を行っています。横浜市公式LINEでは、新型コロナウイルスに関する最新情報を発信しているほか、ワクチン予約や戸籍関係の証明書発行申請、転出届の手続きなどが行えます。またLINEの他にもTwitter、Facebook、Instagram、YouTubeなどのSNSを目的に合わせて活用し、情報発信を行っています。
(参考:横浜市ソーシャルメディア一覧|横浜市公式ホームページ

RPAの活用

横浜市は、人口当たりの職員数が他の都市に比べて少なく、省人化に力を入れています。その一環として、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation、以下RPA)による市役所業務の効率化を推進しています。
(参考:横浜市公式サイト データ集

RPAとは

RPAはロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略で、人間がコンピューター上で行っている定型作業をロボットに記憶させて自動化することです。大量のデータ入力やダウンロード、一斉メールの配信など、マニュアルで定められたことを何度も反復するような単純作業に向いています。これらの作業をRPA化することで、作業時間の削減、人的リソースの節約、ケアレスミスの防止などが期待できます。

横浜市は日本電信電話株式会社株式会社NTTデータ株式会社クニエと協力し、RPAの有効性についての共同実験を行いました。データ取得などマニュアル化しやすいさまざまな市政業務について、RPAの導入でどれだけの業務時間削減が見込めるかについて検証したところ、財政局の工事落札候補者の技術者の確認業務において年間約118時間、健康保険福祉局の画像ファイル取得業務においては年間約396時間もの業務時間の削減が見込めるという結果が得られました。今後の本格導入に向けて、導入範囲の精査や技術サポート体制の整備を進める見通しです。
(参考:横浜市における「RPA に関する共同実験」報告書公表

評価項目

今回は、自治体の公式サイトのページや自治体の取材記事などを基に、DX化に関する自治体の取り組みの有無について独自に調査しました。ここでは、採点に利用した31項目を3つの観点について分類した上で、DXにおけるポイントやユーザーフレンドリーな自治体作りについて解説します。

方針・施策について (観点①)

DX化を進める上での方針や施策、DX化やICT活用に関する部署の有無、都道府県・民間企業との連携、プロモーションにおけるメディアの活用など、DX化に向けた組織作り、方向性などが示されているかを評価しました。

  • 都道府県と連携し、市区町村独自でのデジタル化指針を公表している
  • 民間との連携によるプロジェクト企画が行われている
  • SDGsに対するデジタル施策が公表されているか
  • 自治体主導でDX人材の育成を宣言し行っている
  • DXやICTなど明確にDX化に関する部署がある
  • 市のプロモーションにおいてメディアの活用に取り組んでいる

業務の効率化について (観点②)

ICTを活用した業務の効率化の中でも、特に自治体側における取り組みについて評価しました。ペーパーレス化やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の利用や予約システムの導入など業務の単純化・省人化に関するものが主に含まれます。

  • 予約システムの導入を行っている
  • オンラインセミナーなどWEBツールの仕組みがある
  • オンラインセミナーなどWEBツール活用の実績がある
  • 全面もしくは一部テレワークの導入、印鑑廃止などの取り組みがある
  • 3年以内でペーパーレス化(証明書関連のデジタル化)が実装された
  • ワクチン接種情報について特設サイトを設けている
  • ワクチン接種の運用において、オンライン申請等デジタル活用が進んでいる
  • 定型業務や単純業務にRPAを利用している
  • 役所内をフリーアドレス化している

住民向け・ユーザーフレンドリーについて (観点③)

DX化として重要な観点となる住民向けの取り組みで、行政の手続きや情報発信においてユーザーフレンドリーになっているか、あるいはICT教育、デジタルデバイドの解消など住民がよりよく暮らせる取り組みがなされているかを評価しました。

  • 公式ホームページの更新頻度は3日に1度以上である
  • サイト速度、ユーザビリティに長けている
  • YouTubeチャンネルがある
  • Twitter/Instagram/Facebookの公式アカウントがある
  • SNSの更新頻度は週1以上ある
  • 行政に関する住民の質問にチャットボットなどを導入して対応している
  • 役所窓口や自治体の公共施設でキャッシュレス決済を導入している
  • 納税をキャッシュレス化しているか
  • 緊急時のメール通知機能など搭載している
  • 自治体が提供するアプリケーションがある
  • LINEによる相談窓口、情報発信体制がある
  • 教育ICT(教育用タブレットの配布など)に力をいれている
  • 高齢者とのデジタルデバイド解消に取り組んでいる
  • 住民票の写しや税証明などがデジタル上のツールで申請可能である
  • 事業者向けの診断システム(例:補助金、助成金)を導入し事業者からの問い合わせ対策を施している
  • 多言語(3言語以上)に対応している

これらの評価項目は、他の自治体の調査を続けていきながら、随時追加、改善していく予定です。

横浜市|調査のまとめ

横浜市では全国的に見ても、DXについて先進的な取り組みが数多く見られました。システム導入後も維持だけにとどまらず、新たな実証実験を次々に行っているので、今後の取り組みにも注目です。千葉県の今後の取り組みとして期待されるのは以下の点です。

  • 役所内にフリーアドレスを導入している
    フリーアドレスとは、オフィスに社員の個人専用のデスクを設けず、フロアに長机や椅子が設置されているところに、自由に着席場所を選んで仕事をするスタイルです。横浜市役所内での取り組みは公式ホームページ上から確認することはできませんでしたが、同市港北区ではフリーアドレスの導入実績があります。
    【フリーアドレスを導入している自治体】
    大阪府:フリーアドレス試行用モバイル内線電話導入事業
  • 事業者向けの診断システム(例:補助金、助成金)を導入し事業者からの問い合わせ対策を施している
    こちらについても、現在はシステムではなく職員による審査が行われています。しかし、補助金診断はRPA化しやすい業務の1つなので、官民共同でRPAの実証実験を積極的に行う横浜市では、近いうちに診断システムが導入されるかもしれません。
    【事業者向けの診断システムを導入している自治体】
    東京都渋谷区:【事業者向け】補助金・助成金自動診断システム

全体を通して、横浜市は全国的に見てもかなり積極的にDX化への政策に取り組んでいることが分かりました。今後は上記の項目の改善・向上に向けた施策が期待されています。

地方自治体におけるRESERVA予約システムの活用

画像引用元:RESERVA公式サイト

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